沖縄本島からさらに南へ。ようこそ宮古島へ。この島を一言で説明するなら絶景を金で買える島である。いや違うな、絶景が勝手に目に入ってきて財布の紐が緩む島だ。そっちのが正しい。
サトウキビとマンゴーと下心で成り立ってるような観光天国・宮古島。海の色がおかしい。青いとかじゃない。脳に直接「青い」と語りかけてくるレベルである。Photoshopで補正されたみたいな自然って何だ。
「宮古島?リゾート婚か爆買い観光客の巣窟でしょ?」わかる、すごくわかる。でもな、そんなあなたにこそ言いたい。この島には無料で人生の価値観を壊してくる橋があるんだよ。
それが、日本一長い無料の橋『伊良部大橋』
その全長は3,540メートル。車を走らせれば海の上を滑走してるような錯覚に陥る、やばい橋である。これは、多分「人生の中で渡ってよかった橋ランキング」一位確定の案件だろう…ということで、冷静に紹介していきます。まだ感情が爆発する前に。

【伊良部大橋とは?】
【場所】沖縄県・宮古島 ~ 伊良部島。
【特徴】全長3,540m、日本一長い無料の橋、海の色がおかしい。
伊良部大橋(いらぶおおはし)は、宮古島と伊良部島を繋ぐ命の架け橋。とかいうと中二病が過ぎるけど、割と真面目に『日本の橋の概念』をぶっ壊してくる存在です。
場所は沖縄県・宮古島の西端。そこから伊良部島へ向けて、全長3,540メートルの橋がドーン!と突き出している。しかもこれ、有料じゃない。無料!ゼロ円!タダ!一円も取らずに、絶景に脳みそぶん殴られる体験ができるんですよ。いいんですか?本当に。
開通は2015年。開通当初、地元の人間も観光客も「えっこれ本当にタダ?」と三度聞き返した(知らんけど)。でも本当にタダ。走るだけでOK。料金所もない。代わりに、景色がすべてを回収してくる。
車で走ると、真っ青な空とエメラルドグリーンの海に左右を囲まれ、地上の存在を一瞬忘れます。ちょっとしたSF。現実逃避しながらアクセル踏んでいい橋ってそうそうない。
高低差のある曲線的なフォルムも魅力。ただ直線で長いだけじゃないってところに、橋としての色気を感じる。車だけでなく、歩行者や自転車も通行OK(ただし死ぬほど日差し強いので注意)。
ええ、そうです。今まさに私はこの橋を走る寸前ですが、もう好き。何ならちょっと緊張してきた。
『日本一長い無料の橋』と『日本一意味不明なテンション』をかけて、これから爆走してきます。(正常終了、まだ)

【伊良部大橋の歴史】
その橋、ただの観光名所じゃない。沖縄県民の悲願、生活道路の革命だった。伊良部大橋の物語は、単なる『映え橋』では終わりません。むしろ始まりは映えと無縁な『生活の足』としての切実な声だったんです。
①なぜ伊良部大橋を作ったのか?
伊良部大橋が繋ぐのは、宮古島と伊良部島。両方とも沖縄県宮古島市に属していて、直線距離はおよそ5kmにも関わらず、かつての交通手段は船一択。
しかしこの船
- 運航本数が少ない
- 天候に左右されやすい
- 時間と手間がかかる
という島民ブチギレ三銃士を揃えてまして「病院行くのに天気頼みってなんなんだよ」という島民の怒りが、やがて沖縄県庁のケツを叩く事になります。
②どれくらいかけて作られた?
伊良部大橋の建設が正式に決定したのは1999年(平成11年)。開通(完成)したのが2015年(平成27年)。
その間、約16年。長ぇよ。マジで長ぇ。もはや『大河ドラマ』っていうか『大河工事』です。
理由としては
- 海が深くて工事が大変だった(宮古海峡なめんな)
- 環境への配慮や設計の変更が何度も発生
- 予算の調整と検証に時間がかかった
- あと、ただでさえ沖縄って台風来まくるんだわ
などなど、地味な苦労が100回くらい大声で叫んでも足りないレベルで積み上がっていました。でも諦めなかった。それは、伊良部島の島民が「橋がないと生きてけない」って本気で言ってたから。
③なんで無料なの?
さて。ここが観光客にとっての最大の謎。なぜ、こんな立派な橋が『無料』なのか?答えはシンプル。
この橋、国と県のお金で作られた『公費100%の公共事業だから』です。
普通、こういう長い橋は『有料道路』で元を取ろうとします。例えば本州四国連絡橋とか、明石海峡大橋とか。
でも伊良部大橋は違った。生活道路としての意味が強すぎた。通勤通学、通院、物流のインフラとして、日常的に使う人の負担を減らしたかった。だから『無料化』は最初からの前提。そこに観光が乗っかってきたのは、後付け。
いわば伊良部大橋は『生活のために作ったのに絶景すぎて全力で観光名所になってしまった橋』という、無欲な美しさの塊なんです。これだけの背景を知ったあとに見る伊良部大橋は、ただの絶景じゃない『人の執念と願いと税金の塊』です。

さぁ行こう。アクセル踏め。税金の上を走り抜ける、人生初の贅沢へ(まだ正常終了)。
【伊良部大橋のアクセス情報】
- 住所:沖縄県宮古島市平良久貝〜伊良部島(伊良部側は佐和田)
- 全長:3,540m(日本一長い無料橋)
- アクセス:宮古空港から車で約15分で橋の入口へ到達。
あの…普通にナビ入れたら着きます。それ以上に何を言えと。地図で見りゃすぐわかるよこんなもん。グーグル様を信仰しろ。
①駐車場はある?
- 伊良部大橋そのものには駐車場はありません
- 写真撮るなら、伊良部島側の『橋の見える丘公園』が有名
- 宮古島側には一時停止スペースはあるが長居はNG
ちなみに、橋の上で「わぁ〜絶景〜♡」とか言いながら車停めたらお前の免許終了するからな。命より映えを優先するな。事故ったら雲海もないぞ。ここ海だし。
②レンタカーは必要?
必要。圧倒的に必要。徒歩でも自転車でも行けるけど、風で飛ぶぞお前ごと。特に橋の真ん中、風速10m超える日とか普通にあります。帽子が飛ぶ?スマホが飛ぶ?いやお前の心が折れるんだよ。
③通行料金?
0円です。この橋、通行料とかありません。財布開かなくていいです。その代わりに目と心を全開にして絶景を受け止めて下さい。

さぁ、そろそろ車は橋の入口に到達する…道路の先に伸びる青と白の異世界ゲート…景色じゃない、これは精神のワープ装置。
【実際行ってみたら】
①トイレが…ない!
伊良部大橋、絶景はあるが便器はない。歩いて渡るつもりのお前「おっちょっと歩いてみよっかな〜♪」じゃねぇんだよ。お前の膀胱2kmで決壊するぞ?橋の途中で腹が鳴ったら?膀胱が悲鳴をあげたら?そこにはただ、360度の美ら海と絶望しかない。
お前が今から伊良部大橋を歩こうとしてるなら、まずは最寄りのコンビニで『トイレ済み』を確認してこい。その上で言う。絶景は美しいが、人間の生理現象には勝てない。
これを守らなかった者は、絶景を前にして漏らすか海に祈るしかない。マジで笑えない。笑ってんのは海だけだお前は泣いてる。
②橋の途中に謎の駐車スペースがある
歩いてると途中に小さな駐車スペースがある。なぜここに?って思うよね?正直に言うよ。おそらく、いや確実にこういう事だ。
我慢の限界を迎えた人が車内で用を足すための最後の砦。
こんな神聖な橋に用を足すのはやめろ。でもわかる。わかるんだよ。景色が美しすぎて時間を忘れるし、風が気持ち良すぎてトイレを忘れる。でも言う。尊厳と絶景の両立は不可能だ。伊良部大橋は楽園だ。だが、トイレだけは現実だ。

準備はいいか?カメラよし、風対策よし、心の防御力ゼロ。じゃあ行こうか、伊良部大橋へ。現実世界をぶち抜いていくぞ。
【最後に】
あのな、よく聞け。伊良部大橋は無料で渡れる観光スポットとか言うな。軽々しく言うな。お前は今、日本一長くて、日本一狂ってる絶景に殴られるための橋に向かってるんだよ。海の色がどうとか、空が広いとか、風が気持ちいいとか、そんなレベルじゃねぇんだ。脳が溶ける。心が解放される。現実感が消える。
気づけばお前、橋の上で叫んでる…「生きてるってこういう事かぁぁああ!!!」ってな!!
でもな!その隣でカップルは笑ってるし、若者は踊ってるし、お前はその中で孤独に伊良部の風を吸ってる!けど、それで良い!!ここは魂をぶっ壊して再構築する場所なんだから!伊良部大橋は最高だ!でもな、帽子と正気は確実に飛ぶから気をつけろ!!!
行け!渡れ!叫べ!そしてトイレは事前に行け!!さぁ!お前の人生に一本、伊良部大橋をかけてこい!!
