【なをとの離島観光記/津堅島編】本島から日帰りで遊べるニンジンの独裁国家『津堅島』へ観光しに行ってきたら何もないが沢山あった。

離島観光記

『沖縄』と聞いて皆さん何を想像しますか?エメラルドグリーンの海?白い砂浜?それとも「はいさ〜い」って言ってる陽気な県民たち?全部正解です。だが同時に、それ全部『想像の中の沖縄』です。実際の沖縄は、湿気で人が溶ける、カビと虫と渋滞に全包囲される、年中天気予報が大喜利状態の、生きるには少々ハードモードな現場です。だがそんな沖縄にも「えっなにここ?」って穴場があるんです。

それが今回ご紹介する『津堅島(つけんじま)』

沖縄本島からたった船で20分。にも関わらず、観光客のSNSレーダーを完全にすり抜けてる『何もないがある』という哲学的なパワーワードが似合いすぎる島。ちなみにこの島、別名『ニンジンの独裁国家』と呼ばれてまして、島全体がニンジンに支配されてるんじゃないかってくらい畑も特産品もグッズも全部ニンジン。多分市役所もニンジンでできてます。観光スポットも娯楽施設もほとんど無い。でも、ないからこそある『贅沢な無』がここにはあるんです。

津堅島とは?

ちょっと聞いてくださいよ皆さん。津堅島、マジでヤバいんです(良い意味で)

場所は沖縄本島のうるま市・平敷屋港からフェリーで約20分。

ってレベルのアクセス。
日帰りどころか『気分転換でちょっと行く感覚で行ける離島』ここだけです。

人口? だいたい200人前後です。もう島民の名前全員覚えられる。下手すりゃ全員親戚。

で、名産物。はい、出ました。ニンジンです。ただのニンジンじゃない『津堅にんじん』っていうブランド品。甘い、柔らかい、クセがないの三拍子で、もはや『野菜界のスイーツ』って言っても過言じゃない。島のどこを見てもニンジン。スーパーの袋を見てもニンジン。お土産屋で売ってるクッキーもジャムも全部ニンジン。島の空気にすらカロテンが溶け込んでるんじゃないかって勢い。

特徴?え、さっきから全部特徴じゃないですか?でもあえて言うなら海が綺麗。しかも誰もいない。これ、控えめに言ってプライベートビーチ100%保証付き。水着ギャルが「キャッキャウフフ」じゃなくて誰もいない浜辺で波音聞きながら「あぁ人生…」ってなるタイプの海です。心が疲れた現代人、ここで全員リセットされろ。

津堅島は観光地じゃない『概念』なんです。

歴史

津堅島というのはですね、ただのニンジン王国じゃないんです。歴史のスジがちゃんと通った根の深い島なんです。

[古代]縄文人もいたっぽい。

まず、津堅島に人が住み始めたのは、縄文時代から弥生時代あたりと推定されています。周辺で石器や貝塚が見つかっていて、海と共に生きた人々の生活が垣間見えます。狩猟採集民族がニンジンを育てたのか?と思うかもしれませんが、流石にその頃はニンジンはなかったです。でも、栄養価の高い島だったのは間違いない。人間も島も地力があったってことです。

[中世]琉球王国と津堅島

14〜15世紀に琉球王国が誕生。津堅島もこの流れに飲まれますが、実はこの頃から『戦略的に重要な島』として扱われてました。なぜかというと、津堅島は沖縄本島・本部半島との位置関係的に航路の中継地として超優秀。いわば『海のサービスエリア』。琉球交易の時代、那覇と中城、勝連あたりの港を結ぶルートの途中にあるんです。つまり津堅島は、昔から通りすがりに寄りたくなる島だったんです。いわばコンビニみたいな安心感がある存在。

[近代]あのニンジンが誕生

さて。津堅島の歴史における最大の革命、それがニンジン栽培の開始です。時は昭和初期。津堅島では「自給自足が限界きてるぞやばいぞ」となった時、救世主のように現れたのがニンジン様。もともとは北海道など寒冷地向けの野菜ですが、温暖な気候と水はけの良い津堅島の土壌と奇跡のマッチングを果たします。津堅にんじんの誕生です。

普通のニンジンと違って
・芯が柔らかい
・香りが優しい
・甘みが強い

と、全体的に育ちが良すぎて心配になるレベルの良い子なんです。例えるなら名門女子高に通ってるけどたまにパン屋でバイトしてる文学少女みたいな

[近代]観光と農業のハイブリッド

近年では日帰りで行ける、観光客少なめ、海もニンジンもあるという奇跡の三拍子で、津堅島はゆる観光地としてじわじわ人気に。今でも中心は農業。地元の皆さんがニンジンを全力で育て、収穫し、出荷してます。この島の経済『9割ニンジン1割愛』そんな感じです。

津堅島の歴史は、戦略的に重要な島から始まり、地力で生き抜いてきた島民たちがニンジンで一発逆転した、根菜系サクセスストーリーです。なので観光で訪れる際は「ニンジンしかねぇじゃん」じゃなくて「この島ニンジンひとつでここまで来たのか…」と感動しながらかじってください。きっと味が違う。

その他の観光スポット紹介

今回は「え?観光ってニンジン見て終わりじゃないの?」とか言ってるお前らのために、全力で遊べるスポットを紹介します。ちゃんとあるんですよ津堅島にも。むしろあるってレベルじゃねぇぞ!!!

トゥマイ浜

まず紹介したいのがここ。津堅島の正真正銘のエース。港から歩いて約20分、もうこれだけで若干遠足っぽい感出てテンション上がるのに、たどり着いた先が天国。

「何この透明度。海じゃなくて液晶画面じゃねぇの?」
「砂白すぎ。これ歯磨き粉のCMで使われてたやつやろ」

ってレベルの美しさ。しかも人が少ない。そう、ここは天国を独り占めする罪悪感が味わえるビーチなんです。※たまにマジな天国(クラゲや日差し)も混じってるので油断は禁物。

津堅島シークルーズ

さぁ、泳ぐだけじゃ足りねぇお前らにはこれだ。

『津堅島シークルーズ』さん(理性が死ぬ遊び場)

トゥマイ浜のすぐそばにあるマリンショップで、水上バイクでバナナボート引っ張ったり、サップでぷかぷか浮いたり、シュノーケルで海の中の魚と恋バナをしたり、要するに地味な島のイメージを木っ端みじんにしてくれる最強の遊び場です。遊び終わる頃には「やばい…俺、津堅島で人生初の心の開放したかも」とか言い出すこと間違いなし。※そのまま移住する人もいそうだから、島民の皆さんは心の準備だけお願いします。

③…で、他には?

えー…はい、以上です。ふたつです。

「え?ふたつ? たったそれだけ? 他は?え?もっとないの?」

とか言わないでください!!すいません!!!!他にも灯台とか展望台(壊れてた)とかあるんですけど時間と体力の都合により行ってません。見てないのに見たようなフリして語るとかそんなセコい人間にはなりたくないんです!!!!!!(いや行けよって話ではある)

今回はお勧めできる二強トゥマイ浜津堅島シークルーズさんだけ紹介させていただきました。この島、規模は小さいけど深掘れば爆発するタイプの名脇役なんです。いぶし銀の魅力、ぜひ味わいに来てください。下にシークルーズさんの公式サイトを貼ったので、気になる方はチェックよろしくお願いします。

アクセス情報

出発地

名称住所
平敷屋港(平敷屋地区旅客待合所)沖縄県うるま市勝連平敷屋3784-21
[Googleマップ]

出港時間

便出港船種備考
1便07:30高速船[情報源]神谷観光
2便09:00フェリー
3便11:00フェリー
4便14:00フェリー
5便17:00高速船

乗船料金

フェリーくがに

区分片道往復備考
大人650円1,240円[情報源]神谷観光
小人330円630円

高速船ニューくがに

区分片道往復備考
大人800円1,530円[情報源]神谷観光
小人410円790円

決済方法

販売支払い方法備考
乗船当日の窓口販売のみ現金のみ[情報源]神谷観光

駐車場

名称/場所料金備考
平敷屋旅客待合所周辺
[Googleマップ]
無料漁港内/[情報源]神谷観光

実際に行ってみた

北部はニンジン畑しかない

いやほんとにニンジン以外の景色が消える瞬間ある。Googleマップにニンジンの結界とでも書いておいて欲しいレベル。大地がオレンジ色の情熱を全力で押しつけてくる。野菜に支配されてる感じがして、正直怖い。

ニンジン畑と廃墟が多すぎる

島歩いてて感動したのは、廃墟のバリエーションの豊富さ。生活感あるのに無人ってリアルにホラーやめて。まるで何かが起きて全員消えた島感ある。ニンジンの呪い説はわりと真剣に考察するべき。

チャリなくても歩ける(地獄だけど)

「自転車借りるのもったいないし、歩くか~♪」って笑ってた3分後には足が「やめとけクソ野郎」って文句言い出す。島は小さいけど太陽がデカすぎる。日焼け止め塗らないと魂まで焼かれるぞ。

島の東より西が栄えてる

栄えてるって言っても廃墟と空き家が少ない方ってレベルな。なんていうか、西側がマシな終末世界って感じ。それでも島の玄関口やお店が集まってるのは西側だから、生き残りたいならまずは西に向かえ。

売店と自販機は集落限定

島一周する予定なら、ペットボトル2本持ってけ。「どうせ自販機くらいあるやろ」と思って彷徨う観光客が毎年脱水してる(予想)。マリンブルーの海と空に油断すると、口の中はパッサパサのニンジン畑と化す。

乗船券は片道ずつ買う

往復券を買うと楽だけど、楽=金かかる。行きは高速船(15分/高い)、帰りはフェリー(30分/安い)でちょっとだけケチれるし、時間の選択肢も広がる。ちなみに窓口のおばちゃんがめっちゃ優しい。多分、島で一番のサービス精神。

島人の話

津堅島の奥地に佇む、ホグワーツ城を彷彿とさせる謎のデカい校舎「これ絶対、魔法の授業とかあるやつやん…」って思って地元民に聞くと中にいるのは小中学生合わせて約10人。10人であの建物使う?贅沢すぎて頭おかしくなるわ。先生が生徒より多いって聞いた瞬間、俺の脳内にお客さんがゼロのライブ会場が浮かんだんだが?

島では、生徒の数が少なすぎるせいで運動会は全プレイヤー強制参加イベントと化す。お爺もお婆も、犬も猫も、下手したらニンジンまで参戦してる可能性ある。全員で玉入れとかしてる光景、想像するだけで楽しそう。そして、津堅島にはモズクレースなる謎の競技が存在する。もう名前の時点でカオス。だってモズクとレースだぞ?ぬるぬるの海藻にまみれた大人たちが必死に走るのか?それなら誰が勝っても尊敬するし、誰が負けても笑える。これはスポーツというより生き様の展示会

津堅島の中学生たちは、卒業後は本島の高校へ進学する。当然だ。島に高校がないんだから。で、その後何が起きるかというと全員島に戻って来ない。「こっちの方が便利で楽だし…車も店もあるし何よりモズクレースないし…」ってそりゃあそうだ。本島が現代なら津堅島は時代劇だもん。

とはいえ、島に残る人たちはそれでもこの島を好きで、この島で笑って、怒って、ぬるぬるしてる訳で。都会じゃ得られない詰まり気味の幸せが、津堅島にはたっぷり詰まってるのかもしれません。いや詰まりすぎて息できないかも。でも、そんな不便で泥臭くてヘンテコな島が、僕はなんかちょっと好きだと思った。

最後に

津堅島。ニンジンとモズクとホグワーツしかないこの島に、なぜ俺たちは心惹かれるのか、答えは簡単だ。

『何もない』が実は『全部ある』って事に気付ける場所だから。

便利なコンビニもない。洒落たカフェもない。Googleレビューに星4.8つけたくなる絶景レストランもない。でも、空と海が広くて、人がやたら親切で、島全体がボケ担当みたいな空気感がある。観光って本当は何を見たかじゃなくて何を感じたかなんじゃないか。そして津堅島は、その感じたかの部分で、静かに脳天ぶち抜いてくるタイプの島です。という訳であなたがもし「観光地に飽きた」とか言ってる奴だったらとりあえずこの島に来い。ニンジン食って、モズク走って、人生考え直せ。

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