沖縄を歩けば三歩でシーサーに当たる。屋根の上、門の上、はたまた玄関先で仁王立ちしている奴ら…もはやコンビニより多い。
本土でいうと『狛犬的なポジション』なんだけど、狛犬が神社専属のエリート警備員だとしたら、シーサーはフリーランスの地域密着型SP。しかも報酬はゼロ、休憩ゼロ、勤務時間は365日24時間。いや働きすぎだろ。
その役割は魔除け。悪いモノが来たら「はいダメ〜」と入口でシャットアウトする沖縄の顔役だ。観光客からすれば『可愛い置物』地元民からすれば『無言のセキュリティシステム』
今回は、そんなシーサーの起源と歴史を深掘りして、なぜこいつらが世界一働く置物と呼ばれるに至ったのかを暴いていく。
シーサーとは?
名前の由来
シーサーの名前のルーツは、もう隠す気ゼロの『獅子(しし)』だ。中国経由でやってきたライオン像が琉球弁で変化して『シーシー』から『シーサー』になった説が有力だ。
つまり、海外から来たエリート外資系ライオンが沖縄で方言に染まって完全に地元民化してしまったパターン。
都会から移住して、気づいたら島ぞうりでスーパー行くようになった俺と同じ末路だ。
見た目と特徴
シーサーは基本ペアで行動。これはカップル文化とかではなく、役割分担の為だ。
口を開けたオスは『悪いモノを追い払う』担当、口を閉じたメスは『福を逃がさない』担当。
つまり、オスは外で暴れてメスは家を守る…昭和の夫婦像をそのまま置物にしたみたいな構造。
ただし現代では、両方口開けっぱなしとか、逆に両方閉じっぱなしの自由派シーサーもいて、もはや配置ルールはカオス。
沖縄での設置場所
昔は屋根の上が定位置。高い所から村全体を監視して、悪霊が来たら「おいコラ」と威嚇するスタイル。
今は門柱や玄関、庭先などに置くパターンも増え、完全に宅配業者より出迎えが早い存在になった。
中にはマンションの玄関ドア前にミニシーサーを置く人もいて、悪霊どころかNHKの集金もビビらせられる万能インテリア。
起源
中国の獅子文化からの影響
シーサーの祖先は、中国からやって来た唐獅子(からじし)。本土の寺や神社にいる唐獅子は、どちらかというと芸術品寄りで、眉毛ふっさふさの毛並みふわふわの高級ライオン像。
一方、沖縄に来たらそのライオンが突然ワイルド化して、毛は潮風でパサパサ、顔は日焼けでガングロ、完全に離島仕様に進化。
要するに、都会のホストが離島に移住して漁師になったみたいなギャップがある。
琉球王国時代の伝来ルート
琉球王国は中継貿易のプロ。中国、東南アジア、日本を行き来する貿易ルートで、物だけじゃなく文化や信仰も運んでいた。
その中で唐獅子が船に乗ってやってきて「ここ潮風気持ち良いじゃん」と居座ったのがシーサー誕生のきっかけ。つまり、世界的な貿易ネットワークの中で輸入された『異国の番犬』が、沖縄で土着化した訳だ。
貿易の副産物がゴーヤーでも泡盛でもなく、獅子像ってあたりが沖縄のセンス。
最古のシーサーとその伝説
記録に残る最古のシーサーは、15世紀頃の首里城近くに置かれたもので『集落を火事から守った』とか『悪霊を追い払った』とか、まるで消防士と祈祷師のハイブリッドみたいな伝説を持っている。
また、壺屋焼の職人たちが作った陶器シーサーも有名で、屋根の上で風雨に耐え続けるタフな仕様。
要するに、最古のシーサーは神話補正で無敵キャラ扱いされ、その末裔たちが今も沖縄全土で24時間勤務している訳だ。
歴史
魔除けとしての役割の始まり
シーサーが魔除けを始めたのは、まだ人類が「Wi-Fiが弱い!」とかじゃなく「村に悪霊が出た!」と騒いでた時代。
伝説によれば、琉球王国時代、那覇の港を荒らす巨大な怪物をシーサー像が一喝して退治したらしい…まぁ現実的には「悪いものは外!良いものは中!」という今で言うセキュリティゲート的な発想から置かれたんだけど、伝説補正で一気にヒーロー昇格。
その日から、シーサーは『とりあえず置いとけ枠』に入り、沖縄の玄関口を守ることになった訳だ。
民家/集落での広がり
江戸時代には、シーサーはお金持ち士族や公共施設の特権アイテムだった。
ところが19世紀後半、壺屋焼などの職人たちが量産できるようになり「ウチの屋根にもシーサー置けるじゃん!」と一般家庭に普及。
村単位では「東西南北の入口に置くと悪霊が入らない!」という事で、集落ごとに巨大シーサーを設置。
つまり江戸〜明治の沖縄は、屋根の上も村の門もシーサーだらけのセキュリティ強化月間みたいな状態になっていた。
戦後の観光化とデザインの多様化
戦後、アメリカ統治下で観光業が伸びると、シーサーは魔除けから『お土産屋の人気タレント』に転職。
本来は渋い顔の守護神なのに、観光客向けに笑顔、ハート柄、パステルカラーと、アイドル並みに路線変更。
その結果『魔除けというより可愛くて置きたい』という層が増え、今や沖縄土産界のゆるキャラ枠を確保…ただし本気のシーサー職人たちは今も、牙むき出し&目力MAXの『現役ガチ守護神』を作り続けている訳だ。
シーサーの文化的意味
『阿吽(あうん)』の口の意味
シーサーをよく見ると、片方は口をガバッと開けて「おう!いらっしゃい!」と言ってそうだし、もう片方は口を閉じて「黙って見張ってるぞ」って顔をしている。
これは『阿吽(あうん)』という仏教や神道に共通するポーズで、開いている方が福を呼び込み、閉じている方が災いをシャットアウトする役割を持つ。
要するに、一匹は営業部、もう一匹は警備部という二匹一組の会社経営スタイル。
これを一匹だけ置く人もいるけど、それはつまり会社を営業だけで回そうとするか、警備だけで回そうとするようなもので、どちらかがブラック労働確定だ。
沖縄独自の魔除け信仰との融合
沖縄のシーサーは、本土の獅子像と違って『マジムン』という沖縄特有の悪霊もターゲットにしている。マジムンは家や村に災いをもたらすとされ、特に夜や風の通り道からやって来ると信じられてきた。
だからシーサーは屋根や門柱の上から「おい!そこの怪しい風!進入禁止だぞ!」と常時監視中。魔除けというより、もう完全に24時間稼働のセコム。
しかも給料はゼロ、労働組合なし。世界一働く置物の所以はここにある。
置き方のタブーと方角
シーサーを置く時、向きや位置を間違えると『福も災いも同時に招き入れる開放型マンション』になる危険がある。
基本的には家や門の外を向けて、悪いものを防ぐように設置する。内向きにすると、家の中でシーサーが見張りをしているだけで、外からの侵入はノーガード戦法だ。
また、二匹の位置は『右がオス(口開き)』で『左がメス(口閉じ)』が一般的。逆に置くと効果が半減すると言われるが、厳密には地域や家ごとの流儀もある。
【結論】シーサーはインテリアじゃなくて防犯設備。お洒落配置より正しい配置が命を守る。
現代のシーサー事情
観光土産としての進化
昔のシーサーは土色か素焼きが当たり前だったのに、今や那覇の国際通りを歩けば原色暴走族みたいなシーサーがズラリ。
ピンクのラメ入り、サングラス着用、ハイビスカスを咥えたモデルまでいる。素材も陶器からコンクリ、プラスチック、果てはガラス細工まで登場。
もはや魔除けというより『映え』と『持ち帰りやすさ』で進化を遂げた結果、空港の土産コーナーでは『重量級の本格派』と『軽量コンパクトな海外旅行者向けモデル』が共存している。
ただし、軽くなったからといって魔除け性能まで軽くなってない事を祈りたい。
芸術作品としてのシーサー
観光土産だけじゃなく、沖縄の陶芸家たちはシーサーを完全にアートの領域に引き上げてしまった。
壺屋焼や読谷山焼の窯元では、一体数十万円する手作りのシーサーが並び、表情や質感が一匹ずつ違う。牙をむき出しにして「オラ来いよ」と言ってる奴もいれば、穏やかな笑みで「まぁ座れや」と誘ってる奴もいる。
このレベルになると、魔除けというよりもはや家の守護神兼インテリア担当大臣。
そして購入者の財布から災い(お金)を吸い取る力も兼ね備えている。
海外への広がり
最近はハワイやグアム、中国、東南アジアにもシーサーが輸出され、現地の人に『Okinawa Lion』として紹介されている。
中には海外の家の門に金ピカのシーサーが鎮座している例もあり、魔除けというより『ここの住人、絶対沖縄行ったことあるだろ』というステータスシンボル化。
SNSの普及で
- 外国人観光客がシーサーと一緒に撮った写真を拡散
- それを見た友達が沖縄に来る
- またシーサーが増える
という無限シーサー増殖ループが起きている。
世界中の玄関に配置されたら、もしかして地球規模でマジムン絶滅も夢じゃない。
最後に
歴史と文化と職務経歴書を全部抱えて、今日も玄関先で働き続けるのがシーサー。魔除けだけじゃなく、地域のシンボル、観光ポスターの顔、土産物屋の売上担当までこなす世界一ブラックな置物である。
観光客も、この背景をちょっと知ってから眺めると、単なる可愛い置物じゃなく「コイツ…何百年も休まず働いてるのか」というリスペクトが芽生えるはず。
次に沖縄に来た時は、ぜひ自分好みの表情やポーズのシーサーを探してみてほしい。その瞬間、あなただけの魔除け兼、人生の同居人が決まる…かもしれない。
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